2017年10月27日

へいこうしたぼくら

なおみさんは、けだものだった。
痩せた体躯も細長い手足も、アンバランスに大きめの肋骨も骨盤も、僕はたまらなく愛おしいと思っていた。
欲しいものを欲しいと言い、ほんとうの心は押し込める悲しい決意を持った人だった。

髪も根も意識もふにゃふにゃの僕をわらって、なおみさんは僕を食べ尽くした。
そうして幸せそうになおみさんが笑うから、僕はそれで幸せだった。

けれど僕が、じぶんが飢えているということに気付いてしまった。
そのとき、なおみさんは僕にとって、野生の太陽から理知の土星にかわった。
ぽっかりとくらい宇宙にあって、お気に入りを孤独に並べて、押し込めた心をまもっているのだと今ならわかるけれど、そのときの僕にとって、なおみさんはもはや恐怖の対象でしかなかった。
それでも僕はなおみさんに求められたいと思った。食べ尽くされて、もっとちょうだいと、なおみさんに言ってほしかった。

なおみさんは僕を食べ残したと僕は思っている。デザートがまだあるのに、なおみさんはもう満腹で、じゅうぶんで、飽きていた。
そして甘美さをおそれ、慣れないブラックコーヒーを飲んで眉をひそめ、席を立った。
僕はまだあるよ、まだいるよ、新しくなったよ、味わって、笑ってみせてよ。
そう言えなかった僕は、結局じつのところは、もういなかったんだろう。僕がまだあると思い込んで、なおみさんは僕を食べれば喜ぶと思い上がって、空っぽのお皿を何枚も出しただけなんだろう。
僕はなおみさんを幸せにしたかったけれど、なおみさんは僕が僕を幸せにしたいだけだと本能で知っていた。
だから爪も牙もしまって、ただ丸くなって眠ることを選んだ。

なおみさんは欲しいものしか欲しがらない。
もういない僕は、なおみさんにとっては、とっくにいらないものだった。

僕は飢えたまま、せめて金星であれば愛を語れたかなと、宇宙のすみっこで丸くなって、引火性のガスを持て余している。

僕らは隣り合っているのに、それぞれのまっすぐさで、交わることなく浮かび続けている。


posted by 春奈 at 03:30| 自己表現 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年09月04日

ひとつぼし

こんな気持ちの夜は
もういいから、くっついて寝ようって
そういうものがほしかった。
posted by 春奈 at 02:29| 自己表現 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年11月19日

いっしゅう

まわりまわってかえってきているのだ
いつも周回遅れで、あれやこれやを追いかけている
集中力に欠けている。
マルチタスクがこなせているわけではない。
冷静さと、瞬発力が必要だ。
posted by 春奈 at 01:12| 自己表現 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年09月07日

すなお

まだだめ、とか
言ってほしい、とか
そこじゃない。そこじゃないんだ。

綺麗な景色を眺めるなら、
きみと一緒がいいな と思った。
それがぜんぶだ。

欲しいなんて言えないよ、
いらないと言われるのがこわいから。
でも最初から、きみもわたしも
持ってなかったはずだ。

今じゃないから、いつか。
なんて言ってる間に
きみもわたしも飛び立ってしまう。
それでも踏み出して、転ぶのがこわい。
posted by 春奈 at 23:24| 自己表現 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年08月04日

信号

キラキラした命の、やわらかいところを
委ねてくれてありがとう

でもきみは緑だった
わたしは青かったから
きみの黄色を鈍らせてしまった

きみは嬉しそうに
どんどん緑をわたしに委ねた
紺が近づいて
わたしはどんどん青くなった

そうして
命の重みを感じたわたしは
青くなっていくきみから逃げ出した

残ったのは
ただ青くてなまぐさいわたしたち
posted by 春奈 at 01:48| 自己表現 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年07月05日

ag 20120924

ねえどっかもう切れちゃったよ
噴火できない活火山
うん、やっぱもう越えちゃってよ
重みに負けた浮遊感 感覚

旅立ちたいとか消えちゃいたいとか
もういっそとんじゃいなよ
きみはその手を伸ばしたか?
掴み取ろうとしたもの睨んでみせて

ねえ もっと見せてよ きみのキャパシティを
はやく聴かせてよ いのちの声を
叫んでよ もっと体を震わせてさあ
受け止めてよ わたしの心を
いのちを削って 走ってみてよ
あーあ あーあ できるんでしょ?


あっけなくもう癒えちゃったよ
鳴り止むことないパッションピット
そっけなくもう逃げちゃったよ
甘えに飢えた無常観 勘弁

吐き出したいとか泣き出したいとか
もういっそのことのんじゃいなよ
きみはそいつを噛み砕いたか?
欲しがってたもの 反芻する残像

ねえ もっと見せてよ きみのキャパシティを
はやくみせてよ こころの泪を
わたしは知ってるから
消耗なんかしないで、ちゃんとぜんぶ使ってよ

きみの目で きみの耳で きみの心で
選んできめてみせてよ
選んだそれはわたしかなあ
それがわたしならいいなあ

あーあ あーあ わかるんでしょ?
はやくみつけてあげてよ そこでうずいてる生命力を
背中なら蹴るよ いくらでも
だから飛んで 跳んでみせてよ
重力なんかに負けないで
きみをとばすのはきみ自身
しんどくて当たり前です
あーあ ほらね できたんでしょ?
posted by 春奈 at 18:40| 自己表現 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年06月06日

ストックホルム

ただ隣にいて、見つめることを責められずにいたい。
会話がなくてもいい。
笑顔もなくてもいい。
空気でいい、空気になればきみを見つめていても責められない。
存在を意識されないかわりに、否定もされずにいられる。

押し倒してくれていい。
隣にいたい。
posted by 春奈 at 21:46| 自己表現 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年09月27日

leather.2

いじわるなことを言わないのは、もう他人だからだ
今までとちがう何かを諦めたし
それを受け入れたんだろう

また壊して、ほしがって、
はやくみつけてほしい
この愚かであわれな生き物を
みつけて、はやく
みとってほしいよ

ぼろぼろの鞄はからっぽにして
はやく遠くに
手の届かないところへ行ってくれたらいい

刻もうとするばかなわたしの腕を
いつだってみんなやさしく振り払うんだ
posted by 春奈 at 23:39| 自己表現 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年08月04日

ひずんだアイ

未来が見えないことは、
現在を切り離す理由にはなりえないだろうか

ゆがんでいてもいい
誰になんといわれてもいい?
ほんとうに?

ほんとうに

あいたいひとが二人いる
一生会えないかもしれない

でも今のままだと、絶対に、一生会えない
だから、会える可能性を、すこしでも、あげる

とびこんでいいよって
わたしを通り抜けた誰かが言ったから
posted by 春奈 at 23:18| 自己表現 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年07月05日

1/9

誰かがわたしの心の家から
さよならを告げて出ていっても
わたしはその部屋に新しい誰かをいれることはできない。
そのひとがのこしてくれた心の形に
他の誰かの心ははいらない。いれてもいけない。

だからわたしは
さよならを言われても、
いってらっしゃいと言う。

けれどそのひとがもし帰ってきたとき
それが一度死を挟んだものなら
もとの部屋にはもういれない。
それはもう別の心だから。


きみは今出ていきたいだろうか
部屋にいてほしいと望むことが、たとえ生きた不在だとしても
束縛になりうるなら
わたしはそこに空虚を入れないよう
きみの不在を笑って待たなければいけない。


空虚になりうる不在は、
そこには愛があるといえるのかなぁ。
とてももろい部屋に
わたしはいつもいちばん大切で失いがたいものを招いてしまう。
それがその本質なのかわたしの性質なのかはまだわからないけれど、
わたしがつよくなることでそれを守れるなら。


あぁ。
いのちに一番近いからもろいのかもしれないな。
いのちはわたしの部屋だ。
わたしはわたしの、死を挟んだ不在と直後の帰宅にたえうるだろうか。
たどりつけるだろうか。

いのちの強さは変わるだろうか。
変わるなら、変えられるなら。
たどりつけるなら。


そんな部屋に入ることはつらくはないかな。
わたしはわたしの部屋を小さくしてでも、その部屋をひろげたいとおもう。
それは重圧ではないかな。
相反する束縛。

すこし迷う。
posted by 春奈 at 05:42| 自己表現 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする